自己破産・民事再生・債務整理

1 はじめに

 個人のお客様と会社・法人のお客様では、債務整理の方法が大きく異なります。以下では、よくご相談がある個人のお客様を中心に、解説をさせていただきます。

2 各種の債務整理の方法

 債務整理には、大きく分けて、債務の支払義務を消滅させる手続である自己破産と、債務を支払うことを前提に返済条件等を変更する手続である民事再生、特定調停、任意整理があります。
 最初に検討しなければならないのは、いずれの手続を選択するかです。この検討は、お客様の負債の総額と保有資産及び毎月の収入などが前提になります。なお、グレーゾーンと過払い金については、後述します。

(1)自己破産

 自己破産は、債務の支払義務を消滅させる手続です。地方裁判所に自己破産・免責の申立てを行ない、裁判所による破産決定と免責決定がなされれば、基本的には債務の支払義務は無くなります。但し、税金等の非免責債務については、破産等の手続きを取られても、支払い義務が残ります。
 問題のない事案であれば、裁判所への申立てから3〜4ヶ月で手続が終了します。しかし、事案によっては、もう少し長くなることがあります。時間がかかる場合というのは、中立的立場で行動する破産管財人を裁判所が選任し、破産に至る経緯や資産及び負債の内容につき調査するときです。会社・法人の自己破産の場合には、ほぼ例外なくこの流れとなります。

(2)民事再生

 民事再生は、債務の一部を消滅したことにし、その残額を支払うことで整理する方法です。会社と個人では、大きく手続きが異なります。
 個人の場合については、一般には、まとめて個人再生と言われます。この個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生があります。いずれの手続も、地方裁判所に申立てを行ない、債務の減額と減額された額の分割払いを内容とする再生計画案を提出し、同計画案について裁判所が認可をした場合には、再生計画案どおりの弁済を原則として3年間(例外の場合5年以内)にわたって行なうこととなります。この手続は、法によって債権の一部カットが認められるということに特徴があります。
 小規模個人再生と給与所得者等再生とでは、認可要件や最低弁済額基準等について異なります。このため、どちらの手続を選択されるかは、弁護士とよく相談のうえ決定する必要があります。なお、認可要件については、再生計画案を債権者の決議に付する必要があるか否かが違います。最低弁済額基準については、可処分所得基準の有無について差があります。
 この個人再生手続には、手続きの終結まで、裁判所への申立てから約6ヶ月程度かかることが一般的です。
 会社・法人の場合も、法によって債権の一部カットが認められることは同じです。それ以上に特徴的なのは、原則として経営者を交代することなく「自主再建」が可能ということにです(いわゆるDIP型)。会社・法人の民事再生手続に際しては、裁判所への予納金の準備、当面のキャッシュフローの調整、申立後の債務者主催による債権者説明会の開催準備等について検討する必要があります。ご相談すべき事項が仔細に渡りますので、詳細については法律相談にてお問い合わせ下さい。

(3)特定調停

 簡易裁判所に申立てを行ない、調停委員の主宰のもとで、債権者との間で、債務の利息制限法に基づく引直しとお客様の弁済能力に合った無理のない支払条件への変更について協議を行ないます。

(4)任意整理

 弁護士や司法書士が、お客様の代理人として、裁判所を介することなく各債権者との間で、債務の利息制限法に基づく引直しとお客様の弁済能力に合った無理のない支払条件への変更について協議を行ないます。

3 グレーゾーンと過払い金請求

 上限金利として、出資法と利息制限法という、二つの法律の定めがあります。出資法の上限は、29.2%、利息制限法の上限金利は、20%です。なお、10万円超100万円までは18%、100万円超は15%です。
 利息制限法を超過する利息の定めは、債務者が債権者に「任意に」弁済をした時に限って、有効となります。利息制限法を超過し、出資法の範囲内は、利息制限法違反であっても出資法違反ではないという微妙な範囲ですので、いわゆるグレーゾーンと呼ばれます。
 最近の判例では、この「任意」性を厳しく解しています。つまり、裁判所は、殆どの場合に利息制限法を超過する利息の支払いは任意になされたものではないと判断しています。このような場合には、利息制限法を超過して支払われた利息は、元本の返済に充当され、その結果元本が完済となった場合には、利息の過払いが発生しますので、不当利得としてその返還を請求することが出来ることになります。これが、過払い利息の返還請求と言われるものです。
 一般的には、利息制限法の定めを超過する利息の定めのもとで7年程度貸借りを続けていると、過払いとなるようです。勿論、貸借りの態様は様々ですので、5年程度返済が続いた段階で過払いとなる場合もあるようです。
 当事務所で受任させていただく場合には、確実な解決のために、債権者に取引履歴の開示を請求し、利息制限法に基づいた引き直し計算を行なった上で、債務整理の方針を確定することとしています。依頼者の方が自己破産や民事再生を希望する場合であっても、この点に変わりはありません。
 債務整理を受任させていただいた場合には、債権者への介入通知の発送を直ぐに行ないます。
 これにより電話や訪問による取立てが中止されます。また、後日、債権者より取引履歴が開示され、これにより過払い金の有無が確認できます。
 現時点では負債の額が多額であり、自己破産が相当である案件であっても、過去に取引があった完済済みの業者に対して債権調査をしたところ、過払金のあることが判明したことにより、自己破産をする必要がなくなったケースもあります。できる限り望ましい解決策を探すために、当事務所にご相談される際には、過去に取引があった完済済みの業者についてもご報告下さい。


↑ページの上へ